脳卒中について

2023年05月01日

利根中央病院
副院長
脳神経外科科長
河内英行

脳卒中とは、脳の血管に障害が生じることによる病気の総称であり、脳血管が詰まる脳梗塞と、脳血管が破れる脳出血・クモ膜下出血があります。これらの病気は命が助かったとしても、意識障害や半身麻痺、失語症などの後遺症が残ることが多く、介護が必要になることが多いのが現状です。脳卒中の発症には、動脈硬化が関係しており、動脈硬化の原因もわかってきているので、要介護状態とならないためにも、予防することが大切です。

動脈硬化の原因は?

動脈硬化の原因として、

  1. 加齢
  2. 高血圧
  3. 糖尿病
  4. 脂質異常症
  5. 喫煙
  6. 大量の飲酒

があります。①の加齢は、今のところ、若返りの薬は存在しないのでやむを得ないですが、②~⑥については、対処できるので、動脈硬化の進行を妨げることができます。

また、心臓の不整脈、特に心房細動は脳梗塞の原因となるので注意が必要です。

特に高血圧・糖尿病・脂質異常症については、症状はなく、気づかないまま数年~数十年放置されていることも多く、気がついた時には手遅れということもあるので、健診は必ず受けるようにしましょう。

高血圧について

高血圧が持続すると、体中の動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞を引き起こしたり、心臓の機能が低下して心不全を起こしたりするので注意が必要です。脳卒中治療ガイドライン2021(以降、ガイドライン)によれば、降圧目標は

  • 75歳未満、冠動脈疾患、CKD(蛋白尿陽性)、糖尿病、抗血栓薬服用中の場合は、130/80mmHg未満
  • 75歳以上、両側経動脈狭窄や主幹動脈閉塞がある場合、CKD(蛋白尿陰性)の場合は、140/90mmHg未満

が妥当とされています。

家庭で血圧を測る場合は、起床後一時間以内に、排尿を済ませ、椅子に座って数分安静にした後、上腕で測定するのが良いとされています。

  • CKD=慢性腎臓病

高血圧が指摘されたら、減塩を心掛け、主治医に相談し、適切な治療を受け、降圧目標を維持しましょう。

糖尿病について

糖尿病のうち、2型糖尿病の患者様においては、脳卒中を含めた心血管イベントの抑制に食餌療法・運動療法と合わせて薬物治療を行うように勧められています。糖尿病の治療については、主治医と十分に相談し、自分に合った治療法を選択し、糖尿病の悪化を防ぎ、脳卒中を予防しましょう。また、2型糖尿病の方は、高血圧や次にあげる脂質異常症などの厳格な管理が進められます。

脂質異常症について

脂質異常症のうち、脳卒中の発症に強く関係しているのは、高コレステロール血症と言われています。コレステロールには善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)があり、LDLの値をHDLで割ったものが、2より大きいか小さいかで判断します。2より大きい方は、主治医と相談し、高コレステロール血症治療薬(スタチン)の投与が勧められます。2より小さい方は高コレステロール血症においては、問題はないと思われます。ただし、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの再発予防のため、スタチンを多めに内服して1より小さくする治療法もあります。

喫煙について

喫煙は脳卒中の危険性を、著しく上昇させるため、脳卒中予防のためには禁煙が強く推奨されます。受動喫煙も脳卒中の危険因子になりうるので、受動喫煙を回避することも大事となります。1日1本の喫煙でも1日20本喫煙する場合の半分ほどの脳卒中発症リスクがあることがわかっているので、減煙より禁煙が勧められます。5~10年の禁煙で脳卒中のリスクは減るので、何十年吸っていようが、禁煙する方が良いといわれています。最近、電子タバコの方も増えていますが、現状では従来のタバコより脳卒中のリスクが低い可能性がありますが、十分な証拠はなく、吸わない方が良いといわれています。

大量の飲酒について

飲酒については少量の飲酒と大量の飲酒で、脳卒中予防の観点では異なります。アルコール摂取量は飲むお酒の種類と量によって計算されます。

例えば、ビール350mlの場合、アルコール濃度は約5%のため、350×5/100=17.5gとなります。少量から中等量(アルコール24g以下/日)の方は、飲んでいる方が脳梗塞になりにくいとのデータがあり、大量の飲酒(アルコール48g以上/日)の方は全ての脳卒中の発症リスク上昇に関係しています。アルコールは適切に飲めば、薬にもなるし、大量に飲めば体に毒になることを覚えておきましょう。

不整脈について

心房細動による不整脈のある方は、心臓内での血瘤の乱れによって血液の塊りができて、それが脳血管を詰まらせてしまう脳塞栓を生じる危険性があります。動悸など感じたら、内科を受診し心電図などを行いましょう。心房細動の方は、抗凝固薬の内服が勧められており、年齢や腎機能などの評価を行ってから処方されますので、主治医とよく相談しましょう。

最後に

脳卒中は、原因不明の病気ではありません。突然発症する病気ではありますが、十分に健康管理を行うことで、発症リスクを少なくすることは可能です。市町村や会社などの健康診断を定期的に受診し、健康管理を行うことで、脳卒中を予防していきましょう。

今年度より、利根中央病院脳神経外科は常勤医師二名体制となっており、当院健診センターでの脳ドックも受けやすくなっております。脳の萎縮を測定し、認知症診断も行っております。心配な方は脳ドック受診もおすすめします。

将来、脳卒中を発症し、後遺症や合併症のため、要介護状態となってしまわないように、今からでも遅くないので健康管理を行っていきましょう。

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