2017年10月01日
利根中央病院内科診療技術部長
原田 孝
最近、煙の出ない、あるいは煙の見えにくい「新しいタバコ」「電子タバコ」が次々と発売されています。コンビニエンスストアのレジのあたりで目にすることも多くなりました。売り文句は「健康リスクが少ない」「受動喫煙の危険がない(人に迷惑をかけない)」「禁煙までのワンステップ」などとなっていますが、本当でしょうか?
今回はその特徴と健康被害について、現在わかっていることをお話します。
日本で売られているのは、「非燃焼式・加熱式タバコ」フィリップモリス・ジャパン社の「iQOS(アイコス)」、JTの「Ploom TEC(プルーム・テック)」、BAT社の「glo(グロー)」の3種類です。
どんな仕組み?
タバコの葉を燃やさずに、溶液を加えて電熱線の発熱によって、霧状になった微粒子を吸う構造になっています。写真1、2をご参照ください。
発生した微粒子には従来の紙巻タバコより若干少ないものの、かなりの量のニコチンが含まれています。アメリカの医学雑誌に発表された論文では、アイコスの蒸気に含まれるニコチンの量は、ラッキーストライクの84%であったと報告されています。
ニコチンは非常に依存性が高い物質です。そして血管を収縮させ,血圧や脈拍を上げます。症状としては頭痛、吐き気、めまい、咳や痰、喘鳴、中耳炎などがあります。急性心筋梗塞や脳梗塞、脳出血、大動脈の解離など重大な血管性疾患を発症するリスクもあります。
また、蒸気の中には、シックハウス症候群の主な原因といわれるホルムアルデヒドなどの発癌物質もふくまれています。
アクロレイン、ベンズアルデヒドといった毒性物質・刺激性物質も含まれているとのことです。
受動喫煙は?
当然、これらの物質は受動喫煙として、周囲の人にも同様の健康被害を及ぼします。しかも、煙が見えにくく、臭いもわずかなので避けることが難しい分、余計にたちが悪いと言えます。
禁煙できるの?
2016年8月に発表された「電子タバコに関する世界保健機関報告書」によれば、電子タバコが禁煙を助けるのか、妨げるのか、科学的根拠に基づいた調査研究の報告が無く、まだ結論が出ていないのが現状です。
紙巻タバコと同額でさらに器具の購入とメンテナンスにかかる費用。手入れも大変そうです。紙巻タバコから電子タバコに切り替えようと考えるのは、自身の健康や他者への迷惑を気遣われてのことだと思います。それでしたら、思い切って禁煙してみませんか。お一人で大変であれば、禁煙外来でサポートさせていただきます。ニコチンの呪縛から解き放たれましょう。
さて電子タバコと言われるものの中には、ニコチンが含まれていないものもあります。総称してVape(ベイプ)と呼ばれているものです。いろいろな会社から多種多様な商品が発売されているようです。
「リキッド」といわれる液体を水蒸気化して、それを吸い込みます。写真3をご参照ください。
タバコの味に似せたり、フルーツやコーヒーの味をつけたりしていますが、中身が明らかでありません。2014年の厚生労働省の調査では、3製品中2製品から前述したホルムアルデヒドが大量に検出されたという報告もあります。ニッケルやクロムなどの重金属の他、多くの有害物質の使用が疑われています。
さらに、これら電子タバコをめぐっては、紙巻タバコには無かった新しいトラブルも発生しています。飛行機内でのバッテリー発火事故が相次いで報告されました。海外では、吸っている最中に爆発して重傷を負った事例なども発生しているようです。
禁煙外来は毎週水曜日の午後です。詳細は外来Aブロックまでお問い合わせください。