2025年5月
利根中央病院 臨床倫理委員会
Ⅰ 目的
当指針は、患者が人生の最終段階における医療・ケアを選択する際、医療・ケア従事者がチームとして、その意思決定を適切に支援することを目的に定められたものである。
Ⅱ 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセス
人生の最終段階における医療・ケアは、患者が、医療・ケアチームと十分に話し合い、いずれもが納得したうえで決定する。話し合いに際し、医療・ケアチームは本人が希望する者が同席できるよう努める。
医療・ケアチームは、患者一人ひとりが自分の最期をどのように迎えたいかを選ぶ権利を尊重し、認知機能や精神状態、言語能力、意思決定能力に応じた適切な情報提供と説明を行う。その際、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア行為の変更、医療・ケア行為の中止については、その医学的妥当性や適切性を十分に念頭に置いたうえで提示する。
話し合いは、病状や生活状況の変化、または意思の変化に応じて繰り返し行い、医療・ケアチームは、患者が意思の変化を表明しやすい関係性や環境づくりに努める。
Ⅲ 患者の意思確認が困難な場合の対応
患者は、自らの意思が表明できない場合の自らの意思の推定者として、代理意思決定者を前もって定めておくことができる。本人が意思を少しでも表明できる場合はその意思を尊重するのが原則であるが、意思が表明できない場合は、医療・ケアチームが代理意思決定者を通じて本人の意向を推定し、医療・ケアの内容を話し合う。
代理意思決定者が定められていない場合、医療・ケアチームのメンバーが合議のうえ、本人のこれまでの言動や状況から意向を推定し、特定の家族やパートナー、友人などを代理意思決定者に準じて扱うことができる。また、意思確認が困難で、かつ身寄りがない場合は、医療・ケアチーム内で合議のうえ判断を行う。
Ⅳ 診療録への記載
話し合いの内容は診療録に適切に記載し、参加していない医療・ケア従事者も必要に応じ参照できるようにする。
Ⅴ 臨床倫理委員会
話し合いで医療・ケアの内容決定が困難な場合、医療・ケアチームは臨床倫理委員会に相談することができる。
Ⅵ 指針の位置づけ
当指針は、2018年に作成された『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』の改訂版である。