2015年12月01日
利根中央病院
感染管理認定看護師
松井 奈美
ノロウイルスは、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で急性胃腸炎を引き起こすウイルス性の感染症です。主に冬場に多発し、10月頃から流行がはじまり12~1月にピークを迎えますが、年間を通して発生します。このウイルスは感染力が非常に強く、少量のウイルス(10~100個)でも感染し発症します。
食品からの感染だけでなく、人から人への感染も多いことから食品を取り扱う飲食店や施設、病院などでは、感染予防に向けた万全な衛生管理が求められています。今回は、ご家庭における予防対策についてご紹介します。
ノロウイルスの特徴
ノロウイルスは体内に入って小腸で増殖し、12~48時間(潜伏期間)で突然の嘔吐・吐き気、腹痛から下痢症状が起こることが特徴です。下痢は水様性で、重症例では1日に十数回も見られますが、通常は数回で治まります。発熱や筋肉痛、頭痛などの症状が見られることもありますが、後遺症はなく、通常であれば1~2日程度で症状は治まります。
また症状のない「不顕性感染」とよばれる、ノロウイルスに感染しているのにもかかわらず、嘔吐などの症状の出ない方がいます。無症状であっても便の中にウイルスを排出していることがあり、無自覚のまま感染源となってしまう場合があります。周囲に胃腸炎症状の人がいる場合、食品を取り扱う人は特に注意が必要です。そのため、症状がなくても手洗いやトイレを衛生的に使用するなど、日常から感染対策を実施しましょう。
感染予防について
ノロウイルスによる食中毒予防には、食品を十分に加熱して食べましょう。特に二枚貝は内臓にウイルスを濃縮・蓄積するため、汚染リスクが高いと考えられています。85~90℃で90秒以上加熱することが必要です。
手洗いは、石けんと水道水で行いましょう。嘔吐下痢があるような場合は、手指用アルコール消毒剤は効果のないことが多いため、図1のような手洗いを30秒以上かけて実施することが必要です。特に、帰宅後、食事の準備をする前、食事の前、トイレの後にはしっかりと手を洗いましょう。また、嘔吐や下痢などの症状がある場合にはタオルの共有はやめましょう。
http://tearai.jp/tetete/download/manual.html
みんなの手洗いサイト・ダウンロードコーナーより
かかってしまった場合
有効なお薬はなく、休息し少しずつ水分補給をすること、無理に下痢止めなど内服しないことです。水分は経口補水液やスポーツドリンクを中心に、常温のまま少 しずつ飲みましょう。脱水症状がひどい場合には点滴を行うこともあります。症状がひどい場合には、病院に電話をして受診の相談をしてください。
適切な汚物の処理
嘔吐物や排泄物には、ノロウイルスが大量に含まれている可能性があります。感染拡大を防ぐためには「すばやく」「適切に」処理することが必要です。
<6つのポイント>
- 使い捨ての手袋、ガウン(エプロン)、マスク、などを着用する
- 処理をする人以外は、汚物に近づかないこと
- 効果的な殺菌剤(塩素系漂白剤)を使う
- 十分に換気をする
- 嘔吐物の周囲を広範囲に清掃すること
- 処理後は手洗いを2度行う
洗濯の際に注意すること
- すぐに洗えないときは、周囲を汚染させないように汚れた衣類をビニール袋に入れておく。
- 下洗いをする(洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いする)
- 0.02%濃度の塩素系漂白剤調整液で消毒し、十分にすすいで乾燥させる
- 下洗いを行った場所も洗剤で洗い0.02%塩素系漂白剤調整液で消毒する。(図2)
その他、厚生労働省ホームページや群馬県ホームページ健康福祉・感染情報などで手洗い方法や嘔吐物処理などのリーフレットがありますので、ご参照ください。
受診時の注意点
受診される場合には嘔吐・下痢症状があることをお伝えください。症状がひどい場合は、別の待合室や自家用車でお待ちいただくこともあります。トイレを使用して汚してしまった場合には、お近くの職員までお知らせください。また夜間、救急外来を受診される場合は、電話を入れて、看護師から受診方法を聞いてから来院していただくようお願いいたします。
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