2013年12月01日
利根中央病院
感染管理認定看護師
松井 奈美
インフルエンザは日本では毎年12月~3月に流行します。これは、温度が低く乾燥した冬に、空気中に漂っているウイルスが長生きできるからです。また乾燥した冷たい空気でのどや鼻の粘膜は弱まり、感染を受けやすい状態になること、年末年始で人の移動が多くウイルスが全国に広がるなども原因とされています。感染すると人によっては重症化する恐れもあります。インフルエンザの感染を広げないために、一人一人が「かからない」「うつさない」対策を実践しましょう。
10人に一人が感染
インフルエンザは急激に発症し、発熱、頭痛、関節痛などを伴います。流行の時期は1月~2月がピークで4月まで散発的に続きます。そしてインフルエンザは、ウイルスが体内に侵入しのどや気管支、肺などで増殖、1~3日で発症します。インフルエンザウイルスには大きくA、B、Cの3つの型に分けられ、世界的に流行を繰り返すごとに変異株がでています。地球規模の動向を解析して流行の予測が行われ、その年のワクチンに活かされています。インフルエンザは感染力が強く、日本では毎年約一千万人、およそ10人に1人が感染してしまいます。
インフルエンザにかかっても、軽症で回復する人もいますが、高齢者や幼児では肺炎や脳症などを併発して重症化してしまうことがあります。その他、妊娠中の方、喘息・慢性呼吸器疾患、心疾患、糖尿病などの持病をお持ちの方も重症化する危険性が高く、感染予防の対策が必要です。
「飛沫感染」と「接触感染」
インフルエンザがどのように感染するのか知っておきましょう。大きく分けて飛沫感染と接触感染という二つの経路があります(図1)。
予防のポイント
- ①手洗い
- インフルエンザウイルスは環境中で24~48時間生存していることがわかっています。外出先から帰宅した後、調理の前後、食事の前には手を洗いましょう。石けんを十分に泡立てて、手全体を洗いましょう。手指消毒用アルコールで消毒するのも効果的です。適量をとり手全体に良く擦り込んでください。小さいお子様がいるご家庭では手の届かないところにおいて危険のないように使用してください。
- ②予防接種
- 予防接種は、インフルエンザが発症する可能性を減らし、発症しても重い症状になることを防ぐ効果があります。重症化しやすい方、またそのような方と同居されているご家族は、医師と相談の上予防接種を受けることをおすすめします。ワクチンは接種してから効果を発揮するまでに約2週間かかります。流行期になる前に早めに接種しましょう。またワクチンを接種しても、手洗いや、日常の健康管理が必要です。
- ③日常生活でできる予防方法
- 乾燥しやすい室内では加湿器の使用や換気をするなどの工夫も必要です。また栄養と休養を十分にとり、体力をつけ抵抗力を高めておきましょう。流行期には人ごみを避け、ウイルスに接触する機会を減らしましょう。
早期受診で症状を抑える
急な発熱、関節痛、全身の倦怠感を伴うなどインフルエンザを疑った場合は、早めに医療機関を受診しましょう。発症から48時間以内に治療開始すると、発熱期間の短縮などの効果が期待できます。ただし症状出現直後ではインフルエンザ簡易検査ではウイルス量によって正しい結果が出ない場合があります。心配な場合は電話で相談しましょう。受診の際はマスクを着用し来院してください。
咳エチケット=感染予防
個人差はありますが発症後3~7日間はウイルスを排出するといわれています。熱が下がった後も咳などの症状がある場合はマスクを着用し周囲への配慮が必要です。そのためには咳エチケットの実践が重要です(図2)。
くしゃみや咳がでるときは、飛沫にウイルスを含んでいる可能性があります。マスクを正しく装着し、飛沫を撒き散らさないように気をつけましょう。
最後に、病院にはインフルエンザに罹りやすく重症化しやすい患者様が多くいます。冬場のご面会はできる限りご遠慮ください。インフルエンザの感染を広げないため、ご理解ご協力をお願いいたします。
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