2012年11月01日
利根中央病院
内科部長
吉見 誠至
喘息は増加しているといわれます。最近の治療薬の進歩により、症状を改善することは以前に比べれば容易になっていますが、患者さんがより安全で快適な生活を送るためには、病気に対する理解とセルフケアが欠かせません。
成人喘息の発症~小児喘息との違い
喘息はこどもだけでなく、大人になってからも発症します。小児期の喘息をもちこす方もいますが、成人の場合40~60歳台の発症が多いのです。小児の喘息の九割はダニなどのアレルギーが原因とされるのに対して、成人の喘息では五割の方はアレルゲン(ダニやハウスダストなどアレルギーの原因となるもの)が見つかるものの、残りの方はアレルゲンが見つかりません。また成人喘息の約10%の方は解熱鎮痛薬で発作を起こすアスピリン喘息です。
喘息の症状~喘息発作が特徴
喘息患者さんのほとんどの方は、呼吸したときにゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)が聴かれ、呼吸が苦しくなることを経験します。これを喘息発作と呼んでいます。喘息発作時、気管支のまわりにある筋肉が収縮して、気管支が細くなっています。同時に気管支粘膜がむくんで痰が増えます。それらにより呼吸が苦しくなります。発作が起きていないときは、気管支はひろがっているので、ゼイゼイがなく通常呼吸も苦しくありません。喘息発作は夜間から朝方にかけて起きることが多く、昼間は症状が無いかあっても軽いことが多いです。発作がひどい場合には、呼吸が苦しくて横になれません。さらに重症の発作では会話も困難となり動けなります。このような状態は緊急事態です。
喘息の方は発作が起きていないときでも気管や気管支粘膜にアレルギーによる慢性的な炎症(白血球などが集まっている状態)があり、気管支が過敏になっています。健常な人では何でもない刺激、たとえばタバコや花火の煙、気候の変化、運動、アレルゲンの吸入、ストレスなどが引金になり、気管支の炎症が強まって、喘息発作が起きます。
喘息発作は喘息の特徴的な症状ですが、ゼイゼイがなくても、咳や胸苦しさだけがある場合もあります。喘息と診断されていない方で、ときどき喘鳴があるとか咳や胸苦しさが続く場合には、喘息かもしれませんので受診してみてください。
普段の治療
患者さんの症状の頻度と程度から、重症度がわかります。重症度に応じて治療は変わりますが、重症であるほど治療は強化されます。気管支の慢性的な炎症をおさえるのにステロイドの吸入(フルタイド、パルミコート、キュバールなど)が有効で、これが慢性期の治療の基礎になります。最近ではステロイドに気管支拡張薬を合わせた吸入薬(アドエアやシムビコート)もよく使われています。定期的に使用することでゼイゼイしにくくなりますので、続けることが大事です。吸入した後は口腔カンジダ症を防ぐためにうがいをしてください。また抗アレルギー薬、長時間作用型の気管支拡張薬の内服・吸入・貼付薬、ステロイドの内服などが使われることもあります。
発作時の対応
喘息発作時には短時間作用型の気管支拡張薬の吸入(メプチンやサルタノール)が有効ですので、手もちの吸入薬があれば、まず吸入をします。ネブライザーで吸入する場合もあります。それでも息苦しさが続くようなら、早く医療機関を受診して点滴や吸入を受けてください。頻繁に吸入が必要になっているときも、喘息が悪化していますから受診が必要です。発作時の対応については主治医とよく相談しておく必要があります。
日常生活の注意点
喘息を悪化させる原因を避けることが重要です。①まず環境整備として、こまめに掃除をしましょう。ハウスダストやチリダニは重要なアレルゲンですが、ダニは湿度が高く、冷暖房の整った環境を好みます。かぜ通しをよくし、ダニの温床となるほこり、食べかすは取り除きます。じゅうたんは避けましょう。畳の上にじゅうたんは非常に悪いです。寝具も重要でそば殻の枕は避ける、枕やふとんはまめに干すなど。②疲れやストレスをためない③十分な睡眠をとる④バランスのよい食事をする④うがい、手洗いなど、かぜの予防をしましょう。インフルエンザワクチンもしておいた方がよいです。⑤ペットが原因になっている場合には、飼わない方がよいです。⑥禁煙はとても大事です。喫煙は百害あって一利なし。喫煙は肺機能を悪化させ、治療効果を落とします。
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