食中毒を防ぐポイント!

2023年08月01日

利根中央病院
管理栄養士
櫻井万幾

食中毒というと飲食店での食事が原因と思われがちですが、実は毎日食べている家庭の食事でも発生しています。普段、当たり前にしていることが、思わぬ食中毒を引き起こすことがあります。家庭での食事作りにおける食中毒予防のポイントをチェックしてみましょう。

食中毒とは?

食中毒の原因菌は「細菌」と「ウイルス」で目に見えない小さなものです。食中毒は1年を通して発生していますが、「細菌」が原因となる食中毒は夏場(6月~8月)に多く発生しています。これは湿度や気温が高く、細菌が増えやすいことが要因と考えられています。「ウイルス」は低温や乾燥した環境中でも長く生存する特徴があり、冬場(11月~3月)はウイルスが原因となる食中毒が多く発生しています。食べ物の中では増殖しませんが、食べ物を通じて体内に入ると、人の腸管内で増殖し食中毒を引き起こします。主な症状は胃腸炎(下痢、腹痛、吐き気など)ですが、発熱など風邪に似た症状の場合もあります。

図1 食中毒の代表的な細菌
図1 食中毒の代表的な細菌
図2 病因物質別食中毒発生件数の割合(平成30~令和4年までの5カ年)
農林水産省ホームページ「食中毒は年間を通して発生しています」より
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/statistics.html
図2 病因物質別食中毒発生件数の割合(平成30~令和4年までの5カ年)
農林水産省ホームページ「食中毒は年間を通して発生しています」より
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/statistics.html

食中毒の代表的な寄生虫(アニサキス)

アニサキスなどの寄生虫による食中毒は年間を通して発生しています。アニサキス幼虫は、魚介類に寄生します。長さは2~3cm、幅は0.5~1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。アニキサス幼虫が寄生している魚介類を生で食べると、激しい腹痛や吐き気、おう吐などの食中毒症状を引き起こすことがあります。予防のポイントは、鮮度を保ち、目視で確認し、取り除くことが基本です。また、冷凍(-20℃で24時間以上)と加熱(70℃以上または60℃なら1分)が有効です。

細菌性食中毒予防の3原則

  1. 細菌を食べ物につけない!(手洗いの徹底、調理器具を分ける)
  2. 食べ物に付着した菌を増やさない!(食品を低温で保存する)
  3. 食べ物や調理器具に付着した細菌をやっつける!(加熱調理、調理器具の殺菌)

食中毒を防ぐ6つのポイント

① 買い物時のポイント

  • 賞味期限を確認する。
  • 肉や魚などの生鮮食品は最後に買う。
  • 肉や魚などは汁が他の食品に付かないように分けてビニール袋に入れる。
  • 寄り道しないでまっすぐ家に帰る。

購入した食品は、保冷剤(氷)等と一緒に持ち帰りましょう。

② 家庭での保存のポイント

  • 持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に保管する。
  • 肉や魚は袋や容器に入れる。
  • 肉、魚、卵を取り扱うときは、前後で必ず手指を洗う。
  • 冷蔵庫10℃以下、冷凍庫-15℃以下で保存。

細菌の多くは10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15度以下では増殖が停止します。食べ物に付着した菌を増やさないためには、低温で保存することが重要です。肉や魚などの生鮮食品や総菜などは、購入後はできるだけ早く冷蔵庫にいれましよう。冷蔵庫に入れても細菌はゆっくりと増殖しますので、冷蔵庫を過信せずに早めに食べることが大事です。

③ 下準備のポイント

  • 調理前には石けんで丁寧に手を洗う。
  • 野菜などの食材は流水できれいに洗う(カット野菜もよく洗う)。
  • 生肉や魚、卵を触ったら手を洗う。
  • 包丁やまな板は肉、魚、野菜用に使い分けると安全。
  • 冷凍食品は使う分だけ冷蔵庫や電子レンジで解凍する。
  • 使用後のふきんやタオルは熱湯で煮沸かした後、しっかりと乾燥させる。

④ 調理時のポイント

  • 調理の前に手を洗う。
  • 肉や魚は十分に加熱。
  • 中心部を75℃で1分以上の加熱が目安。

ノロウイルスを死滅させるためには、中心温度85°Cから90°C、90秒以上の加熱が必要です。 ノロウイルス感染が身近で起こった場合は、食器や生活環境などの消毒を徹底しましょう。 また、おう吐物や乳幼児のおむつ等を処理するときはビニール手袋を使うなど十分注意し、二次感染を予防しましょう。

⑤ 食事時のポイント

  • 食べる前に石けんで手を洗う。
  • 清潔な食器を使う。
  • 作った料理は長時間、室温に放置しない。

寒い時期にもエアコンやストーブなどで室内は暖かくなっていますので注意が必要です。

⑥ 残った食品を扱う時のポイント

  • 残った食品を扱う前にも手を洗う。
  • 清潔な容器に保管する。
  • 温めなおすときも十分に加熱。
  • 時間が経ちすぎたものは思い切って捨てる。
  • ちょっとでもあやしいと思ったら食べずに捨てる。

今日から始めよう正しい手洗い方法

食中毒予防の第一歩は手洗いです。しっかり手洗いして食中毒を防ぎましょう。

図3 正しい手の洗い方
厚生労働省パンフレット「手洗いについて」を改変。
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/qa-jichitai-iryoukikan-fukushishisetsu.html
図3 正しい手の洗い方
厚生労働省パンフレット「手洗いについて」を改変。
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/qa-jichitai-iryoukikan-fukushishisetsu.html

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