2024年06月01日
利根歯科診療所
歯科医師
田端正道
6月4日は「虫歯予防デー」、そこから1週間は「歯と口の健康週間」です。今回はむし歯についての最新情報と予防法についてお話しします。
なぜむし歯になるの?
むし歯は「むし歯菌による感染」が原因です。むし歯菌は、口の中に常にいる常在菌です。そして、常に悪いことをするわけではありませんが、甘いものやごはん、果物、などを栄養にして酸を出します。条件が重なりむし歯菌が増えると口腔内のバランスが崩れ歯を溶かします。これがむし歯です。
また、食後は唾液が適正な環境に戻るのに30分から60分かかりその間、歯が溶けやすくなります。ですから、間食が多い人はよりむし歯になりやすいのです。食後すぐに歯ブラシはしてはいけないと聞いたことがあるかもしれませんが、現在は食後すぐに歯ブラシ、難しい方はうがい(激しいうがい)をすることが推奨されています。
親から子へのむし歯の感染は?
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはむし歯菌がいないことは知っている方もいるのではないでしょうか?むし歯菌は大人の唾液を介して感染します(スプーンの共有、唾液飛沫、おしゃぶり、歯ブラシ等)ある研究では「6割は母親からの感染を認めたが残り4割は母親以外からの感染を認めた」という結果が出ました。先ほど述べたようにむし歯菌は唾液から感染するため指を口に入れることの多い幼児では様々な人から感染することが考えられます。過剰な母子感染予防よりも感染予防に気をつけながら親子関係を大切に沢山のスキンシップをとることが大切かと思います(図1)。
むし歯の世界でも見られる超高齢社会の深刻な問題
むし歯と聞くと子どもがなるイメージがあるのではないでしょうか?1980年代のようにむし歯の洪水と言われていた時代もありましたが、現在は子どものむし歯は激減しており学校健診などに行ってもほとんど見られないようになりました。それだけ国民の意識が変わり予防が定着してきていることの証明だと思います。
しかし、現在大きな問題になっているのが高齢者の「根面う蝕」(こんめんうしょく)です。「根面う蝕」とは歯の根元にできるむし歯です。どうして高齢者に頻発するかというと、年齢を重ねると歯周病などで歯茎が下がり本来は歯茎に覆われている歯の根っこの部分が出てきます。この部分はむし歯になった時の進行が早く、根元では帯状に進行していきます。さらに、様々な薬の副作用と生理的な唾液の減少により口の環境がむし歯菌の繁殖しやすい環境になってしまっているのです。「根面う蝕」は進行すると歯が根元で折れてしまい根っこだけになってしまうこともあるため、注意が必要です。
フッ素でむし歯予防をしましょう
適切なブラッシング、食習慣の見直し(よく噛んで唾液を出す、間食のタイミングなど)が大切ですが、むし歯予防にはフッ素が非常に有効な手段と考えられており、ホームケア(家庭でフッ素配合製品を使用すること)とプロフェッショナルケア(歯科医院で高濃度フッ素を使用すること)があります。ホームケアではフッ化物含有歯磨剤(1450ppm・15歳以上対象)を使用してください。①歯ブラシに2センチの歯磨剤 ②歯磨剤を歯列全体に広げる ③磨く(2分程度)磨き方は自由ですが詳しくは歯科医院にて説明を受けてください ④ブラッシング途中で吐き出さない ⑤歯磨剤を吐き出さず、10mlの水を含む ⑥30秒洗口(最大30秒)⑦水を吐き出し終了 ⑧2時間は飲食をしない プロフェッショナルケアでは9000ppmという高濃度のフッ素塗布を行います。ホームケアでコツコツ毎日フッ素補充と3ヶ月〜6ヶ月の定期的な高濃度フッ素塗布による歯の強化によってむし歯に強い口腔内を作ることが大切です。
痛くないときこそ歯科医院で定期検診を
口腔内の細菌は早いもので20分から遅いものでも数時間で2倍に増殖します。むし歯菌は1時間で2倍になります。むし歯菌は常在菌のため追い出すことはできません。仲良く付き合っていくことが重要になります。
令和の常識は「むし歯は完治しない病気 歯医者は痛くならないために行く所。そして歯科医院に任せるだけでなく、患者様自身が主治医になること」が大切です。ぜひかかりつけ歯科医院を定期検診にご利用ください。