訪問診療のご紹介~家庭医として~

2023年04月01日

利根中央病院
総合診療科 医長
宇敷 萌

利根中央診療所では、総合診療科の医師が訪問診療を行うようになりました。

今回は、訪問診療ではどんなことができるのかなどをご紹介します。もし、訪問診療を利用したいといったご相談がありましたら、まずは病院の総合支援センターや利根中央診療所までお問合せください。

訪問診療とは?

訪問診療とは、医師、看護師が定期的に月に1-2回、ご自宅もしくは施設(一部制限あり)に伺い、診察を行うとともに、必要な処置や検査、処方を行うことです。対象になるのは、病状により通院が難しい方が主な対象となります。費用負担は、治療内容や健康保険負担割合、居住場所(診療所からの距離に応じた交通費)などでも変わります。

なお、利根保健生協では、通院支援も行われており、車がない、運転できない、他の交通手段が難しいといった方でも、車の乗り降り可能な方はそちらの利用をお願いしています。

対象となる方(例)

酸素ボンベや呼吸器を使いながらの移動が難しい。
動くだけで息切れしてしまい移動ができない。
長時間外来で待っているのが難しい。
痛みや体力の低下で通院が難しい。
自宅で最期まで過ごしたい。
自宅や施設でも車椅子に乗せて受診するのは難しい。

その他、状況に応じて相談させていただきます。

訪問診療でできること

診察を行ったうえで、必要な薬の処方や処置(各種カテーテルなどの交換や傷の手当、点滴、注射など)、検査(血液、レントゲン)などを行います。点滴や処置は、訪問看護師と連携して、看護師に行ってもらうこともあります。ただ、病院とは異なり、検査できる内容には制限がありますし、すぐに結果を確認することはできません。点滴の回数や内容は、入院と同じ内容でできるとは限らず、在宅でできる対応範囲内になります。

酸素療法や人工呼吸器、経管栄養(胃ろうなど)、中心静脈栄養など医療的なケアが必要な場合も対応可能です。
がんやそれ以外の疾患で、根本的な治療は難しい状況となり、自宅で最期まで過ごしたいという方のサポートも行っています。訪問看護師と連携し、自宅でのお看取りの対応もしています。

臨時の往診って?

定期的な訪問以外にも、体調の悪化などで必要があれば、緊急時の対応は行っております。24時間365日いつでもとはいかず、電話での対応やお待たせしてしまうこともあります。

定期の訪問診療の契約をされていない方の緊急往診は対応しておりません。そのため、急に動けなくなって受診ができないからといわれて、すぐに往診できるわけではありません。

自宅で過ごすために

新型コロナウルス感染症の拡大の影響で、入院や施設入所では面会が制限されてしまう状況が続いています。一方、自宅であれば、ご家族との時間を過ごすことができたり、気兼ねなく自分のペースで過ごすことができたりします。自宅で過ごすために、訪問看護や訪問介護、訪問入浴などのサービスを利用することもおすすめです。

現在の課題

現在は、主に平日の午後(木曜日除く)に対応しています。24時間の訪問看護サービスと連携し、夜間なども臨時対応も行っていますが、伺うまでに時間が必要なことも多くあります。利根沼田地域は一軒一軒の移動距離・時間が長く、1日に訪問できる件数に限りがあります。そのため、往診対象になるか、対応可能か、相談になります。

各科専門医ではなく家庭医という立場での訪問になりますので、専門医と連携を取りながら在宅でできる治療の提供になります。

家庭医の養成

利根中央病院では、プライマリ・ケア連合学会(PC学会)の認定する家庭医療専門医の養成プログラムを運営しています。PC学会では「家庭医とは、地域住民の健康のために働く総合診療医のこと」と定義しています。病院の外来や病棟で患者様を診療するだけでなく、訪問診療を中心に、介護・福祉サービスと連携して、暮らしをサポートする役割を担うことができる医師の養成を目指しています。そのため訪問診療には、医学生だけでなく研修医や専攻医も同席させていただくことがあります。

この間もたくさんの地域の方に研修にご協力いただいており、感謝しております。

訪問診療導入例

訪問診療導入の例を紹介します。

Aさん 80代

Aさんは、80代の方で、心不全・肺炎で入院となり、点滴などで病状は安定するも食事がとれなくなってしまいました。ご本人が「お家に帰りたい」と強く希望され、栄養のとれる点滴をしながら、訪問看護、訪問診療を利用して退院になりました。退院後、ご自宅にお孫さんも遠方から顔をみにきてくれ、みるみる元気を取り戻し、たくさんお話されるようになりました。病院では見られなかった笑顔がみられるのが何よりもうれしいことでした。

Bさん 90代

Bさんは、90代の方で、膵臓がんの診断となりました。食事も減ってしまって、急に動けなくなってしまった状態ですが、自宅で過ごしたいと希望され、訪問看護のサービスを急いで利用できるよう調整し、訪問診療開始となりました。一か月程度の経過でしたが、その間に県外のご家族も駆けつけ、ご本人との時間を過ごすことができました。最期は、自宅でご家族に見守られながら息を引き取りました。

レスパイト入院制度のご紹介

利根中央病院では、在宅で過ごされている方が、介護されている方の都合などで一時的に自宅にいられなくなる場合に、予定した期間に入院できるレスパイト入院制度があります。病院のベッド状況などにより使えない場合もあります。利用希望の方がいらっしゃれば、ご相談ください。

地域を訪問するなかで

利根沼田の地域で生まれ育った私ですが、この地域の訪問診療に携わるようになり、この地域の美しさを再発見しています。片品川や利根川の流れ、手入れされた田畑の変化、庭木や街路樹の新緑や紅葉、子持山の夕暮れ、谷川や武尊の雪景色などなど…。大切にしていきたいなぁと思うこの頃です。

日々、病院の中で過ごしていると、季節の移り変わりにも気が付かなくなってしまいます。そんな日々のなかで、訪問診療にかかわる時間は、私にとって、かけがえのない時間になっています。

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