安心して診療が受けられる無料低額診療事業

2019年05月01日

利根中央病院
総合支援センター

無料低額診療事業は、国民皆保険制度が整備されていない戦後の日本で、受診できない人を救済する制度として1951年(昭和26年)に開始されました。戦後、日本は経済成長をして豊かな国に発展しました。しかし、1990年代のバブル崩壊や2008年の世界的な金融不安の中、不景気で派遣切りが社会問題となり貧困や格差が広がりました。全日本民医連は「無料低額診療事業」に取り組み、全国加盟の院所で実施しています。2019年3月現在、利根保健生協では利根中央病院と利根歯科診療所、生協みなかみ歯科で無料低額診療事業を行っています。

生活を立て直すための制度

無料低額診療事業は、生計困難な方が経済的な理由等によって必要な医療を受ける機会が制限されることのないよう、無料または低額な料金で診療を行う事業として社会福祉法に定められています。「保険証がない」「医療費の支払いができない」等の理由によって必要な医療を受けることを控えていた患者さんが一定の条件を満たすことで医療費の支払いを心配することもなく受診が可能となります。利用期間は1ヶ月または6ヶ月で、無料の方は医療費自己負担金なし、低額の方は5割減免となります。この無料低額診療事業は一時的な措置(事態に応じて必要な手続きをとる)制度であり、一生涯利用していく制度ではなく、利用可能な期間で生活の立て直しやその他の制度を活用できないか、患者さんと一緒に考え、力を合わせて行動していくことが必要です。

まずは相談を

利根中央病院は総合支援センターへ、利根歯科診療所・生協みなかみ歯科は窓口へ直接ご相談いただくか、電話でお問合せください。(図)担当職員が生活環境・経済状況等についてお話を伺い申請書の作成、必要書類の準備をします。適用審査会で該当するか否か審議して対象者となった場合に利用開始となります。また、他の公的な制度の適用が可能な場合は、その手続をお勧めすることになります。

なぜ、取り組むのか

利根保健生協が加盟する全日本民医連と医療福祉生協連は「無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす」「いつでも必要かつ十分な医療サービスを人としてふさわしいやり方で受ける権利を保障する」理念を掲げています。それを実現するため、地域の人びとのいのちと健康をまもるために事業への取り組みは大変重要です。利根中央病院、利根歯科診療所、生協みなかみ歯科で無料低額診療事業を行い、患者さんの医療を受ける権利(受療権)を守ることで経済的な理由で受診できない患者さんが受診できる、困った時に相談できる医療機関となり、地域住民の健康を支えることに繋がるのではないでしょうか。
身近に「お金が払えない」という理由で医療機関の受診を我慢している方がいらっしゃいましたら、是非ご相談ください。

事例紹介

Aさんは足にむくみ等の違和感、呼吸苦を感じながら仕事を続けてきました。しかし、体調不良のため働くことができなくなりやむを得ず仕事を辞めました。体を休めるも状態は悪化するばかりで、仕事もできず所持金も底をつき借金をして生活していました。全身はむくみ、息苦しさに耐えられず近医受診して当院紹介となりました。医師が入院をすすめるが「お金がない」と話をしているためソーシャルワーカーに連絡が入りました。本人と面接を行い、家族関係や現在までの生活歴、就労や債務状況等の情報を基に「健康で文化的な最低限度の生活を営むためにできることは何か」、Aさんと一緒に考えました。まず、健康になるためには、治療を継続して行うことが必要であり無料低額診療事業申請をして医療費自己負担金をなくすこと、また文化的な最低限度の生活を営むために、債務整理と生活保護申請をAさんと共に行いました。現在、Aさんは生活保護受給され、健康を取り戻し自分の技術を活かした仕事が再びできることを目標に受診をしています。

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