2018年08月01日
利根中央病院 検査技師長
関根 美智子
皆さんはご自分の血液検査の値をご存知ですか。血液を検査することで、自分では気づかない、詳しい体の状態を知ることができます。血液検査をする主な目的は、病気の原因を調べる、診断の確認をする、病気の進行度合を調べる、治療効果を確認する、などがあります。また健康な時でも健康診断を受けることで、病気の早期発見、早期治療につながることはもちろんですが、生活習慣を見直す良い機会となります。
基準値(基準範囲)とは
検査を受けた人が病気であるのか,問題ないのかを判断するために参考となるのが基準値です。基準値を外れていたからといって病気というものではありません。正確な診断は基準値との比較だけではなく,病状や他の検査などを合わせ、総合的に行われます。
血液検査でわかる体の異常
血液検査の種類で体のどこに異常があるか知ることができます。検査項目は多岐にわたりますが、主な検査項目と検査目的の関係を表にしました。
検査値と病気の関係
血液検査の値が異常値になる原因はいろいろありますが、代表的な項目を説明します。
- ①肝機能異常
- 肝臓に疾患がある場合に、血液中で上昇するものにAST(GOT)とALT(GPT)、γ-GTPという酵素があります。これらは肝臓が障害され肝細胞が壊れると血液中に大量に漏れ出すため、検査値が高い場合は、肝機能の異常が疑われます。
- ②脂質異常症
- 血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が基準値から外れ多すぎる、あるいは少なすぎる状態だと脂質異常症が疑われます。原因としては、生活習慣(喫煙や食生活の乱れ・運動不足・糖尿病、睡眠不足など)の乱れ、先天的要因(家族性脂質異常症など遺伝や体質)や、二次性脂質異常症(甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・神経性食思不振症などほかの病気が原因で脂質異常症になること)によるもの、また女性は閉経や妊娠といった要因でも血清脂質が上昇することもあります。
- ③糖代謝異常
- 血糖値、ヘモグロビンA1c、グリコアルブミンなどを測定して診断します。糖代謝において重要な働きをするのがインスリンですが、十分な量が分泌されていなかったり、量はあっても細胞にきちんと働きかけられなかったりすると、糖尿病などの糖代謝異常が疑われます。血糖値は採血時の値ですが、食事や運動により変動します。そのため、常日頃からの状態を把握するために、ヘモグロビンA1c、グリコアルブミンの数値を見ます。ヘモグロビンA1cは過去2か月前から採血時までの血糖の平均血糖値が、グリコアルブミンは過去1か月前から採血時までの平均血糖値がわかります。検査の前だけ食事を控えてもこの検査をすれば日頃の不摂生がバレてしまいます。
- ④腎機能障害
- 腎臓の基本的な働きは、流れ込んできた血液をろ過して余分な水分や老廃物を除去すること、つまり汚れた血液をクリーニングすることです。血液の検査では、腎臓がどのくらい働いているかを調べるeGFR(推算糸球体ろ過量)、ろ過機能を調べる血清クレアチニン(Cr)、血液尿素窒素(BUN)などがあり、基準値から外れると、腎機能が低下した状態が考えられます。また、腎臓の検査では尿検査も重要です。タンパク尿や血尿がある時は詳しい検査が必要です。
- 腫瘍マーカー
- がんには特徴的な物質を産生するものがあります。進行したがんの動態を把握するのに使われています。
正確な検査結果を出すために
常に正確な検査結果を出すのが、私たち臨床検査技師の仕事です。臨床検査には血液検査の他にがん細胞を調べる検査や超音波検査などがありますが、どれも病気の診断に直接影響します。検査機器や検査試薬の管理、検体が正しく採取されているのか、正しく検査されているのか、それらを点検し正確な結果を出すために日々努力しています。また、病院で検査を受ける時、食事摂取の有無や安静状態が影響するものがあります。そのような検査をする場合は検査の前に詳しい説明があるので、注意事項を守って検査を受けてください。正確な検査結果を出すことは、検体を採取前から始まります。
検査を受けましょう
「自分の体のことは自分が1番わかっている」と思われるかもしれませんが、検査をしないとわからないことも多いものです。1つの項目で基準値を外れたからと言ってすぐ病気というものではありませんが、病気が隠れている可能性があります。もし健診を受けて詳しい検査が必要と言われたら、必ず受けるようにしましょう。