2018年04月01日
利根中央病院 薬剤部長
大竹 美恵子
薬を飲む時、何に注意をしていますか?飲む錠数や飲む時間は必ず確認していると思います。薬と薬の飲み合わせにも注意している方も多いと思います。本当に、それだけで大丈夫でしょうか?
今回は薬と食品の関係についてお話しします。
薬と食品の相互作用
薬を飲むときは、水や白湯で飲んでいますか?これには科学的な理由があります。
薬と食品には食べ合わせ・飲み合わせの悪いものがあり、 その危険を知らずに服用してしまうと、逆に健康を害する場合があるからです。
ここでは、代表的な危険な飲み合わせを紹介します。
- ①グレープフルーツ
- グレープフルーツの果肉に含まれる成分が、肝臓での薬の解毒を妨害して、薬の血中濃度を上昇させてしまいます。結果として薬が効きすぎてしまい、血圧が下がりすぎたり、頭痛、めまいなどの症状を引き起こすことがあります。この相互作用はグレープフルーツ摂取後、数日間持続します。
- 他の柑橘類では、ブンタン・スウィーティー・ハッサク・晩白柚・夏ミカン・ダイダイなども相互作用が発現しやすく、オレンジ・レモン・みかんは相互作用発現の可能性は低いです。
- ②納豆・緑黄色野菜
- 納豆や緑黄色野菜はビタミンKを多く含んでいます。ビタミンKは、出血した時に血液を固めて止血する因子を活性化します。血液の抗凝固剤(固まらないようにする薬)はビタミンKにより薬の効きが悪くなってしまいます。
- 同じ大豆製品である豆腐、味噌に関しては、ビタミンKの含量は少ないです。
- ③牛乳
- 抗生剤の成分と牛乳のカルシウムが結合してしまい、薬の作用が低下してしまいます。
- また、大量の牛乳とキャベジンなどのアルカリ性制酸剤を同時に飲むと、腸からのカルシウムの吸収がよくなりすぎ、頭痛やめまい、吐き気・嘔吐、食欲不振、脱力感、無気力、倦怠感などの症状があらわれます。
- スポーツドリンクもカルシウムなどの多くのミネラル成分を含んでいますので注意しましょう。
- ④カフェイン
- カフェインはコーヒー、紅茶、緑茶などに多く含まれています。また、薬の成分でカフェインが含まれている薬もあり、一緒に飲むとカフェインの取りすぎで興奮して眠れなくなることがあります。
- ⑤アルコール
- 薬を服用しているときにアルコールを飲むと、薬の効果が強くなったり弱くなったりすることがあり、副作用も出やすくなることがあります。
- また、ある種の抗生剤はアルコールの分解を抑える働きがあるので、お酒に酔ったときの症状が強く現れることもあります。
- 睡眠薬や精神的な緊張を和らげる薬などは、アルコールと一緒に飲むと効果が非常に強くなってしまいます。
- ⑥チーズ
- チーズにはチラミンという物質が含まれています。チラミンは血圧を上げる働きがあります。チラミンを含む食品を食べても、ふだんは体の中で別の物質に解毒されるので、症状があらわれることはありません。しかし、抗結核薬などの薬がチラミンの分解を妨害するため、チラミン中毒(顔面紅潮、頭痛、急激な血圧上昇など)を起こすことがあります。
- チーズはチラミンの含有量が特に多い食品ですが、チーズ以外のチラミンの含有量が多い食品はニシン、たらこ、サラミ、ソーセージ、ビール、ワインなどです。
以上、薬と食品の飲み合わせについて述べましたが、全ての薬が該当するわけではありません。注意して欲しい薬は医薬品情報提供書などで注意喚起していますので、必ず目を通して下さい。
医薬品情報提供書とは
薬局で薬を受け取ったときに、薬と一緒に渡される薬の説明書のことです。調剤した薬の名前、用法用量、服用上の注意や副作用などの注意事項、その他薬剤師が必要だと思った事項が記載されています。
食物アレルギーと薬
薬の中には食物の成分を含んでいるものがあります。このような薬を食物アレルギーのある方が使用してしまうとアレルギー症状が出てしまう可能性があるため使用できません。
卵、牛乳・乳製品、大豆、牛肉、豚肉、落花生、小麦、ゴマ、果物、ゼラチンにアレルギーがある方は、薬によるアレルギーを引き起こさないためにも診察を受けるときに必ず申し出て下さい。
薬と正しく付き合いましょう
薬もコンビニエンスストアで簡単に買えるようになりました。しかし、その手軽さが健康被害につながってしまうこともあります。
健康な生活を送るためにも医薬品情報提供書やお薬手帳を活用し薬の情報を管理しておくこと、わからないことがあればかかりつけの医師や薬剤師に相談し、薬と正しく付き合いましょう。