入院治療の栄養サポートとは

2017年09月01日

利根中央病院NST(Nutrition Support Team栄養サポートチーム) 専従看護師
戸丸 悟志

栄養サポートチームは2003年に県内で2番目に開始しました。群馬県は全国でも有数の栄養管理が進んでいる県です。チームは医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など様々な職種が集まり、患者さんの栄養が足りているか、点滴内容は適正か、食事の内容があっているかなどを考えています。
対象者は、 1. 入院時のスクリーニングで低栄養や食事が食べられない患者さん、2. 入院後、長期に点滴管理を行い食べられない期間が長い患者さん、 3. 病態により低栄養が予測される患者さん、に週1回回診を行っています。状態が悪い患者さんには毎日関わったりもします。
人間の生理的欲求である「食べること」は誰もが大事と知っていますが、入院すると点滴が優先されて食事がお座成りになる事もしばしば見受けられます。「病気が良くなれば、また食べることができるようになるよ」という言葉がありますが、病気だからこそしっかり食べる事や、計算された栄養での点滴管理が必要になります。この管理をすることが栄養サポートチームの仕事の1つになります。

日本の栄養管理の現状

現在入院患者さんの約40%に栄養不良者が存在します。栄養不良は合併症発生率が2~20倍になり入院治療費・在院日数が増加します。当院でも栄養不良患者さんが3割、栄養不良予備軍患者さんが3割います。病気だからこそ十分な栄養が必要になります。
例えば身長140cm、体重40kg、年齢80歳の患者さんは最低1000~1200キロカロリーの栄養が必要です。食事での提供は簡単ですが、腕からの点滴では体格にもよりますが600~1000キロカロリーが限界です。これでは栄養が足りないので首や鎖骨周辺から入れる高カロリーの点滴ならば2000キロカロリー位までは栄養を入れることができます。病気にあった栄養投与、長期に食べられない時などその人に合った点滴方法が必要になります。
また食事が食べられていたとしても摂取量が足りない時には、量が少なくて栄養があるゼリーや飲み物などの補助食を使用する時もあります。それでも摂取量が増えなければ点滴を併用して栄養量を補わなければなりません。

栄養補給とリハビリについて

入院時の病態にもよりますが、食事が食べられない時期があります。すぐに食べることができれば問題ありませんが、高齢者で食べられない期間が長くなることで老人性嚥下機能低下を起こすことがあります。この病態は、食べ物を飲み込むための筋力が低下し嚥下障害を起こし飲み込みのリハビリの強化が必要となります。入院時の病気の他に新たに病気が加わった事になります。飲み込み以外にもベッドでの安静が長くなることで全身の筋肉が落ち、動きのリハビリが必要になる事もあります。リハビリをするにあたり、適切な栄養管理を行うにはその人の必要エネルギーにリハビリ分の栄養100~500キロカロリーが必要になります。さらに栄養改善を考えるとプラス200キロカロリー位必要になります。この栄養を摂取しなければ栄養改善は認められません。病気を治すために健康な時よりも栄養が必要になります。上記の言葉「病気が良くなれば、また食べることができるようになるよ」では改善に時間がかかり、無駄な医療費が必要になります。入院後もしっかりとした栄養管理が必要になります。

経鼻栄養について

経鼻栄養は何かしらの障害などで口から食事が十分に摂れなくなった方の栄養管理のツールです。一時的なものが多く状態改善などにより経口食へ戻すことができます。栄養管理の基本として「腸を使えるときには腸を使え」という言葉があります。点滴のみで長期食止めでは腸が痩せてしまい、いざ食事を開始したときに消化・吸収障害がおこることがあり、腸から細菌が体に入り重篤な状態になることもあります。この予防に口から食事が食べられない患者さんの早期経腸栄養も必要です。開始する事で病態の悪化を防ぐだけでなく早期改善にも役立っています。

栄養相談について

栄養管理についての相談はいつでも受けられますので、主治医にご一報お願いします。

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