2016年05月01日
利根中央病院
糖尿病療養看護師
関上 美紀
現在日本には890万人の糖尿病が強く疑われる人がいると言われています。予備軍も含めると2210万人にのぼります。「糖尿病予備軍」とは、糖尿病と診断されないものの、血糖値が高めであるため、しだいに糖尿病へと移行していく可能性が高い人です。血糖値に異常のない正常型と糖尿病の間の予備軍は「境界型」とも呼ばれています。この段階で生活習慣を見直し、食生活の改善や運動に取り組むと、糖尿病の発症率がぐっと抑えられることが、研究で明らかになっています。ではどのようなところに気を付けて生活していけばよいのでしょうか?今回は糖尿病を予防するための生活習慣についてお話ししていきます。
糖尿病とは ?
糖尿病とは、インスリンというホルモンの分泌量が少ないか、その効き目が不十分なために、慢性的に血糖が高くなる病気です。1型糖尿病と2型糖尿病、その他の糖尿病に分類されますが、生活習慣病として問題になるのは2型糖尿病です。遺伝的要素に加齢、過食、運動不足、肥満などの環境因子が加わって発症すると考えられています。
血糖が慢性的に高い状態が続くと、血管が痛んでしまい動脈硬化が進みます。動脈硬化が原因で脳梗塞や心筋梗塞を発症したりします。また、細い血管が障害されることで、網膜症や腎症、神経症を起こすことがあります。糖尿病がもとで発症する二次的な病気のことを合併症と言います。長期にわたって高血糖にさらされた血管を守るためには、少しでも早く、かつ速やかに血糖値を正常値に戻していくことが大切です。
境界型といわれたら
少しでも早く血糖値を正常値にするというのは、境界型と診断された場合も同じです。検査の結果、境界型糖尿病と診断されたら、とにかく食事療法と運動療法を心がけることです。「まだ糖尿病ではないのだから、そのうち気が向いたら始める」などとのんきに考えてはいけません。境界型でも肥満があったりすると、インスリンが効きにくくなっていると考えられます。また、境界型でも合併症が絶対起きないということはありません。糖尿病でなくても起こる合併症はあります。動脈硬化は境界型のうちから進行していきますので注意が必要です。
食生活のポイント
血糖コントロールは普段の食事がとても重要です。糖尿病になりにくい食事の基本は、1日3食決まった時間に、栄養バランスのよい食事をすることです。食べていけないものはありませんが、栄養が偏らないようにいろいろな食材を食べましょう。食べる量は腹8分目にしましょう。食べ過ぎには注意が必要です。つい食べ過ぎてしまう人は、食べ過ぎを防ぐ工夫を考えてみましょう。例えば、ゆっくりよく噛んで食べることで、脳の満腹中枢が刺激されて満腹感を得られやすくなります。ラーメンやうどんなどの汁は残すようにすると塩分も控えられます。また、野菜や海草類を食事の最初に食べることで、それらに含まれる食物繊維が糖分の吸収を緩やかにするので、血糖値の上昇が抑えられます。(図)
運動習慣のポイント
運動をすることで血液中のブドウ糖を消費し、血糖値を下げることができます。運動は糖尿病の予防以外に健康にも役立ちます。今まで運動をする習慣がなかった人は、日常生活の中に徐々に運動を取り入れていくとよいと思います。エスカレーターやエレベーターの使用を控えて、階段を使ってみたり、掃除機をかけていたところを、雑巾がけしてみたり、いつもより大きな動作で窓拭きをしてみたりするのもいいですね。ウォーキングや犬の散歩、軽いストレッチなども効果があります。30分以上続けると効果的ですが、最初は15~30分程度の軽い運動から始めてみましょう。また、血糖値の上昇は食後1時間ほどがピークですので、食後30~60分後に運動を始めると効果的です。運動の効果は2日持続すると言われていますので、できれば毎日、少なくとも2日に1日体を動かすように心がけましょう。カレンダーや手帳に記録をつけ、取り組みができているか確認しながら行うといいですね。(例:できた運動、歩数・体重などの数値を記録)
早期の対応が大切
糖尿病は初期では症状がほとんどなく、無自覚で進行していきます。境界型も症状はなく、知らず知らずのうちに血糖値が高くなってしまうため、定期的な健康診断などで自分の血糖値を確認していくことが大切です。検診などで血糖が高めと言われたら、ほっておくのではなく早めに生活習慣の見直しをして下さい。肥満があれば減量をします。また、病院できちんとした検査を受けることをお勧めします。早めに対策をすることで、糖尿病を予防することができるのです。
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