2015年04月01日
利根中央病院
院長・産婦人科医師
糸賀俊一
骨粗鬆症は、骨の強度が低くなり、軽い衝撃でも骨折を起こしやすくなる病気です。特有の症状はほとんどありませんが、骨折に伴って背骨の変形や腰痛が起こり、寝たきりの原因になることもあります。防ぐためには骨粗鬆症の予防と治療が重要です。
現在、わが国には男性300万、女性980万人の骨粗鬆症の患者さんがいると推計されています。今後、高齢化が進むにつれ、さらに増えていくと考えられています。
骨粗鬆症の診断
骨粗鬆症は、骨折の有無と骨密度の値によって診断します。具体的には、
- 脆弱性骨折がある。
- 脆弱性骨折はないが、骨密度が若い人の平均値の70%未満
- 脊椎X線検査で骨粗鬆化が認められる場合
の3ケースです。
脆弱性骨折とは、「低骨量」が原因で、転倒などの軽い衝撃で起こった骨折をいいます。
骨密度は、若い人(20~44歳)の平均値と比べてどれくらい減っているかを計算した「%YAM」(Young Adult Mean・若年成人比較)で示されます。「YAM80%」は「骨密度が若い人の平均の80%」という意味です。
状態 | 骨密度 |
---|---|
正常 | YAMの80%以上 |
骨量減少 | YAMの70~80% |
骨粗鬆症 | YAMの70%未満 |
脆弱性骨折のある場合YAM80%未満で骨粗鬆症と診断されます。
利根中央病院ではデキサ法という微量のX線で骨のミネラル量を測る方法で、腰椎や足のつけね、手首での測定をしています。
骨粗鬆症はなぜ起きる?
骨の代謝のバランスが崩れ、骨密度や骨質が低下して起こります。骨粗鬆症を引き起こす危険因子として以下のようなものが関係しています。
- 原因1 ホルモンの減少
- 女性ホルモン(エストロゲン)は、骨の代謝に大きな関わりを持っています。
- 原因2 栄養の不足
- カルシウム、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKなどの栄養の不足や、加齢や病気などのために腸からこれらの栄養を吸収する力が落ちると、骨量は減りやすくなります。
- 原因3 運動不足、喫煙、飲酒
- 喫煙、過度のアルコール摂取も、骨粗鬆症の危険因子と考えられています。
- 原因4 病気や薬
- ステロイド薬などの薬によって、骨粗鬆症が引き起こされることがあります。
- 原因5 遺伝、体質
- 家族に骨粗鬆症の方や足のつけね(大腿骨近位部)などの骨折をしたことがある方がいる場合は、骨粗鬆症になる危険性が高くなります。
寝たきり原因の一割は骨折
高齢になってからの骨折は、寝たきりの原因となります。2004年の厚生労働省の調査によると、寝たきりなどで介護が必要となる原因の第3位は「骨折・転倒」(10.8%)でした。65歳以上の方、骨粗鬆症の危険因子を持っている方は、骨折の予防をこころがけた生活を送るとともに、自治体などが行う検診を積極的に受け、早期発見することが大切です。骨量の減少が進まないように治療や予防をすることが重要となります。
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の治療の目的は、骨量を減らさずに骨質を良くして、骨折しないようにすることです。骨粗鬆症の治療には、食事、運動、薬物療法があり、とくに食事と運動療法は、予防の基本にもなります。薬物治療が必要な場合は、症状の有無に関わらず、治療を続けていくことが大切です。
- 1.食事療法
- 骨粗鬆症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやタンパク質、骨のリモデリングに必要なビタミンD、ビタミンKなどです。骨粗鬆症の人が避けなくてはならない食品はありませんが、リンや食塩、カフェイン、アルコールはとり過ぎないように心がけましょう。
- 2.運動療法
- 骨は、運動をして負荷をかけることで丈夫になります。さらに、筋肉を鍛えることで体をしっかりと支え、バランス感覚がよくするとふらつきがなくなり、転倒を防ぐこともできるため、運動療法は骨粗鬆症の治療に不可決です。
- 3.薬物療法
- 食事療法や運動療法を行うと同時に、骨量を増やす薬、骨の代謝を助ける薬を使い治療を行います。痛みがある時は、痛みを取る薬も使います。
- 薬物治療によって骨密度の値が改善されても、薬をやめると骨密度は再び低下してしまいます。きちんと治療を続けることが重要です。
筋肉をつけ骨量を保つ
骨を作るには、必要な栄養をとるとともに、適度な運動をして骨に負荷をかけることが必要です。また、筋力をつける運動、バランス感覚をつける運動をすることで、転倒を防止することもできます。また、住まいや身につけるものなど、さまざまな工夫を生活に取り入れることも、転倒を防ぐために大切です。
気になる方は、男性は整形外科、女性は産婦人科にご相談ください。