2013年08月01日
利根中央病院
内科外来主任
吉野 綾
梅雨明けから夏の時期「熱中症」を起す人が急増します。
適切な予防法の把握と症状が出たときの対策の知識がとても重要となります。今回はこの、熱中症の予防と対策についてお話します。
熱中症とは?
暑い環境に長くいることで多量の汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウム)のバランスが崩れる、体内の調整機能が壊れてしまうなどして、発症する障害の総称です。
屋内、屋外を問わず高温や多湿などが原因となって起こります。日射病とは違い室内でも発症するケースが多く、年々増加傾向にあります。
熱中症の種類
熱中症は次の四つに分けられます。
- 熱失神
- 高温や直射日光によって血管が拡張し、血圧が低下、脳血流が減少しておこるものです。めまい、失神などがみられます。顔面蒼白、呼吸回数の増加、唇のしびれが起こり、脈は速く、弱くなります。
- 熱疲労
- 大量の汗をかき、水分の補給が追いつかないと脱水がおこり、熱疲労の原因となります。脱水による症状で、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などがみられます。
- 熱けいれん
- 大量に汗をかき、水分だけを補充して血液内の塩分濃度が低下した場合に、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんがおこります。
- 熱射病
- 水分や塩分の不足から体温調節機能が異常をきたした状態です。そのままでは死に至ることもあるため、緊急に対処し救急車を手配する必要があります。症状としては、汗はかいておらず、皮膚は赤く熱っぽくなり、体温は三九度を超えることが多いです。めまい、吐き気、頭痛のほか、意識障害、錯乱、昏睡全身けいれんなどを伴うこともあります。
熱中症になりやすい人
乳幼児や高齢者は特にご注意を! それ以外の健康人でも体調によっては起こることがあります。
高齢者が特に注意が必要といわれるのはなぜでしょうか? 体内の水分量は年齢とともに少なくなっていきます。また、高齢になると汗を分泌する汗腺の機能や体温を調節する自律神経の働きも低下していきます。暑さやのどの渇きを感じにくくなっており、エアコンがあっても苦手だからと使わない傾向もあるため、熱中症が重症化する一因となっています。また、薬や持病の影響で体温調節がうまくできなくなっていることもあり、重症化しやすい一因となっています。
子供が熱中症にかかりやすいのは?
汗腺をはじめとした体温を調節する機能がまだ十分に発達しておらず、高齢者と同様に熱中症のリスクは高くなります 。
熱中症の予防
屋内の場合
- エアコンや扇風機を活用する。
室温を二八度以下、湿度は七〇%以下にすると良いです。 - 衣服は通気、吸収、速乾性の良いものを着る。
熱が籠らないようにするのが大切です。
外出する場合
- 炎天下での外出は避ける。
- 日蔭を歩く。
- 日傘や帽子等を活用する。
- 水分と塩分を補給する。
のどが渇いてなくても、こまめに水分補給をしましょう。
夜間の熱中症対策
- 寝る前にコップ一杯の水を飲む。
習慣付けをして、熱中症を予防しましょう。
水分補給には水か麦茶が最適です。たくさん汗をかくときには水分とともに塩分も補給しましょう。これは梅干し一つを食べる程度で十分です。熱中症になった経験のある人は熱中症に再度なりやすいと言われています。しっかりと予防し、注意していきましょう。
寝たきり等で介護が必要な人には、介護者が室内環境と適切な水分補給に注意して予防してください。
熱中症になってしまったら
熱中症かもしれないと思ったら……
- 涼しい日陰やクーラーの効いた室内などに移動する。
- 衣類を緩めて休む
- 体を冷やす……冷たい水で濡らしたタオルや氷を巻いたタオルなどで脇の下や足の付け根にあてるようにします。
- 水分補給をする。
おかしいと思ったら病院へ。熱中症は重症になると意識を失い、命の危険に晒されることもあります。おかしいと思ったら涼しいところに避難し、医療機関に相談しましょう。