2013年05月01日
利根中央病院
栄養課 管理栄養士
林 和代
健康について語るとき、よく耳にするのが「体脂肪」という言葉です。体脂肪計の普及に伴って、体重と同じように体脂肪率を健康管理の目安にする人も多いのではないでしょうか。今回はそんな「体脂肪」についてお話します。
体脂肪とは
脂肪は皮膚や皮下、筋肉、骨、神経、血液、内臓など全身のあらゆるところに存在しますが、それらを総称して「体脂肪」といいます。私たちはそれをなくして生きることはできません。エネルギーの貯蔵や体温維持、クッション材として身体を守るなど、生命維持するために重要な役割を担っているのです。しかし体脂肪が多すぎると肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病などを発症あるいは悪化させることもあります。逆に極端に不足すると皮膚や髪の毛などの張り・つやがなくなったり、ホルモン分泌異常による体調不良を起こしたりもします。
「太っている」「痩せている」の目安となる数値が“体重”です。しかし、本当の肥満度は体重に占める脂肪の割合である“体脂肪率”で決まります。体重が標準であっても体脂肪が高ければ「隠れ肥満」と呼ばれることになります。適正範囲は男性10~20%、女性20~29%。体脂肪は多すぎず少なすぎず、適正内に保つよう心がけましょう。 (図1)
体脂肪の種類
皮下脂肪は皮膚のすぐ下にある脂肪で、一度たまると落ちにくいのが特徴です。女性につきやすく下半身に集中して蓄積されます。「皮下脂肪型」といいます。
内臓脂肪は内臓の周りにつく脂肪で、たまりやすく落ちやすいのが特徴です。男性や閉経後の女性につきやすく、内臓(おなか)に集中して蓄積されます。「内臓脂肪型」といい、生活習慣病と関わりが深く注意が必要です。
体脂肪を減らす栄養バランス
炭水化物を極端に減らす、単純にトータルカロリーを減らすなど、体重は落とせるかもしれません。しかし、体脂肪は減らせているでしょうか?体脂肪を減らすためには、三大栄養素(炭水化物C・たんぱく質P・脂質F)のバランスがとても大切になります(図2)。ファーストフードはこのバランスがC:P:F=40:15:45となり脂質に偏っています。また和食はこの理想的なPFCバランスに近くとても栄養バランスがよい食事といえます。
和食の王道である主食のご飯はどんなおかずにもよく合い、腹持ちが良いのが特徴です。パンに比べるとたんぱく質のバランスもよく、消化吸収に時間がかかるため、血糖値を長時間安定した状態に保ちます。
一汁三菜で旬の食材を活かすメニュー
主菜はたんぱく質と脂質を含む魚や肉、コレステロール値を下げる不飽和脂肪酸のEPAやDHAを含む青魚を焼いたものがおすすめです。副菜は食物繊維やビタミン、ミネラルを摂るため、野菜や海藻、きのこ類を、汁物は具をたくさんにしましょう。
食事の摂り方に気をつける
- (1)食べる順番
- 最初に炭水化物を摂ると、インスリンが一気に分泌し、体脂肪が尽きやすくなります。副菜や汁物などを先に口にするようにしましょう。
- (2)不規則な食事
- 夜になると副交感神経が活発化し、栄養を蓄えやすい状態になります。朝ちょっと食べて夜たくさん食べる食生活が、一番体脂肪が蓄積される原因になります。深夜の飲食は控えましょう。
- (3)早食いやながら食い
- 食べ始めてから脳が満腹感を得られるまでにおよそ二〇分かかります。早食いは満腹感が得られたときは、すでに食べ過ぎの状態です。よく噛み、味わって食べると、少量で満腹感を得ることができます。また食べること以外に神経を集中させると満腹中枢が働きにくくなり、無意識のうちに食べ過ぎてしまいがちになります。「ながら食い」は禁物です。
体脂肪を燃焼させる体づくり
食べる量を極端に制限し、摂取カロリーを減らしすぎると筋肉量が減り代謝が低下してしまいます。すると体脂肪が燃焼しにくくなってしまうのです。栄養バランスの良い食事を摂り、適度な運動が効率よく体脂肪を燃焼させてくれる身体づくりをしましょう。