2013年04月01日
利根中央病院
泌尿器科部長
田村 芳美
尿路結石という病気をご存じでしょうか? 腎臓、尿管、膀胱にできる結石をまとめて尿路結石症と呼んでいます。
これまで大きな尿路結石の破砕には体外衝撃波結石破砕術という機械での治療が主役で、当院でも約千回に及ぶ治療回数を重ねて参りました。
しかし、治療の際に痛みが生じる、治療が長期化する等の欠点もありました。近年、それらの問題を克服したレーザー照射砕石装置を用いた手術治療が普及し、当院でもこの春から導入されます。
尿路結石の症状
- Q.尿路結石でどのような症状が起きますか?
- 場所によって症状の出方が異なります。尿管の結石では腰、脇腹、下腹部に激烈な痛みや血尿が出ます。腎臓結石は腎臓に結石ができた段階では症状が出ず、尿管に落ちた後、症状が出てくる場合が多いようです。
- Q.痛みは急激に起きるものなのでしょうか?
- おっしゃる通りで、痛み発作の起きやすい時間帯は決まっており、お昼過ぎから午後にかけてはほとんど起きません。夕方から始まって夜中、さらには早朝に起きやすいとされています。
治療法
- Q.治療法はどうでしょうか?
- 9割の症例は自然排石されると言われています。最近、前立腺肥大症の薬が尿管を拡張する作用があることが判明し、結石の薬物治療の中心になりつつあります。5㎜以下の結石ならばこの薬で自然排石すると思ってください。
- 問題はそれ以外の大きな結石です。当院では平成12年に導入した体外衝撃波結石破砕術により、約千回に及ぶ治療回数を重ねて参りました。しかし、治療中の痛みが辛い、治療が複数回に及び負担が大きい等の問題が生じました。近年、それらの欠点を克服した治療手段として、レーザー照射砕石装置を用いた経尿道的尿管結石破砕術(以下TUL)という手術治療が普及してきました。腰椎麻酔で行えるので手術中、内視鏡画面を見ながら治療状況の説明が可能です。原則として、手術の前日に入院し翌々日の退院、3泊4日の入院期間です。
- Q.TULはお腹を切らなくて済む手術なのですか?
- その通りです。金属製の内視鏡を尿道から膀胱、尿管へと挿入します。そして結石を直接観察して粉々に砕きます。当院でも今春からこの治療を開始することとなりました。
- Q.自然排石しない結石の内、TULで治療できる結石はどのくらいありますか?
- 一般に、おへその高さより低い位置にある尿管結石が治療しやすく、全体の約30%ほどです。それより高い位置ですと、胃カメラのように曲がる柔らかい内視鏡が必要です。新病院に移転した暁にはこちらも導入したいと考えております。それにより自然排石しない結石の内、80%をレーザー照射砕石装置併用の内視鏡手術で施行可能になると考えています。
結石の予防
- Q.結石になりやすい人の性別、年齢などの特徴はどうでしょうか?
- 男性に多いです。40代、50代が多いですが、20代でもまれではありません。また結石ができた経験のある人は一生のうちに50%の確率で再発すると言われています。大きくなると自然排石が難しくなりますので、一度結石のできた方で、冒頭で述べたような症状が出た場合は、早めに診察を受けていただくことをお勧めします。
- Q.結石の予防法についてはどうでしょうか?
- 結石はカルシウム成分からできていますのでカルシウムを食べるとできやすいと考えがちですが、それは間違いです。むしろカルシウムを多く摂取した方が予防には有用です。尿路結石の成分を分析すると約90~95%の患者さんでシュウ酸カルシウムという物質が検出されます。結石形成の最たる元凶は実はシュウ酸です。シュウ酸はピーナッツやカカオ類に多く含まれており、これが尿中に出ると結石の核になります。ところがカルシウムを食べることにより、シュウ酸が腸の中でカルシウムに吸着され便となって排出されます。カルシウムを多く食べることでシュウ酸の尿への排出を抑えましょう。
- Q.ビールを飲むと結石予防になりますか?
- 「ビールを飲むと結石ができない」というのは迷信です。ビールをはじめとしたアルコール飲料を摂取すると一時的に尿量が増え、その後、尿の色が濃くなることを経験すると思います。この、尿が濃くなる状態が結石形成には極めて問題となります。ビールを飲んだらそのまま床についてはいけません。尿が濃くならないように水を飲み、酔いを醒ましてから寝るような習慣をつけることが結石予防のために非常に重要です。