おいしく食べて、上手に虫歯予防  ~虫歯と食事の関係~

2012年06月01日

利根歯科診療所
歯科医師
佐野 健太郎

虫歯とは?「糖分」って何?

むし歯とは、「糖分」を栄養として、むし歯菌(細菌)が作り出した酸によって歯が溶けてしまう病気です。歯周病と並び、歯科の二大疾患とされています。
昔から、むし歯にならないために「砂糖を取りすぎないように」と注意を受けた経験が皆さんあるかと思います。砂糖は糖分の代表です。日本人は砂糖の消費量も少なく、歯も磨いてはいますが、日本人のむし歯の有病率は先進国の中で最も高いのです。しかし、むし歯はしっかりと予防できる疾患であることがわかっています。今回は、おいしく食べながらも、むし歯にならないために上手な食べ方のお話をしたいと思います。
糖分は何に含まれているのでしょうか? 大きく言えば、まずは、甘いお菓子や飲み物、つまり砂糖です。それと、普段食事としているお米や麺類、パンなどです。しかし、お米などは一日三食の栄養として大切なので、欠かすわけにはいきません。この砂糖に注目して、むし歯を予防することが一番の近道でしょう。

効果的な虫歯予防

厚生労働省の食生活指針を参考にすると、砂糖の摂取量は一日約四〇~五〇gです。食事に使う量の目安は、その約半分の二〇gで、つまりお菓子や飲料水で摂取できる砂糖の量は二〇gとなります。

・ポイント1 摂取量について
今回はスティックシュガー(八g)に置き換えて考えてみます。一日のお菓子で摂ることのできる砂糖の量を二〇gとすると、八gのスティックシュガー約三本分です。下の表で具体的に見てみましょう。

このように一日にお菓子から摂ることができる砂糖の量は多くありません。飲料水に意外と糖分が多く含まれているのがわかります。スポーツドリンクの飲み過ぎはむし歯の大きな原因です。特に学生は、スポーツドリンクを多量に摂取することも多いかと思います。お茶などを代替として飲むように心がけるだけで、むし歯の予防につながります。

・ポイント2 食べる回数
むし歯は初期であれば、唾液(つば)により自然に修復されます。しかし、食事の回数が増えると、その修復作業が間に合わなくなり、むし歯になりやすくなります(「脱灰」といいます)。図の脱灰中(黒く塗られている部分)というのが「歯が溶かされている」という意味です。だらだら食べが、いかに良くないかお分かり頂けましたでしょうか。冬、風邪を引いた時などにノド飴をずっとなめていると虫歯になりやすいので、どうしても利用したい場合は、『ノンシュガー』という記載があるものを選ぶとよいでしょう。


・ポイント3 代替甘味料キシリトールの利用
「キシリトール」という言葉を見聞きしたことはありますか? キシリトールは、砂糖と同程度の甘味がある糖分です。むし歯は、糖分を栄養としたむし歯菌から産生された、酸によって歯を溶かす病気だとお話しましたが、キシリトールからは「酸は産生されません」。また、むし歯菌を直接アタックして退治してくれるのです。そればかりか、修復作用のある唾液の分泌量を増やしてくれもします。お菓子として、飴やガムを摂取する場合、ぜひキシリトールの物をお選びください。キシリトールを利用して、上手にむし歯を予防しましょう 。

・ポイント4 うがいをする
うがいをすることによって、お口の中の食べかすや、細菌を除去することができます。どうしても時間がない時や、ブラッシングを行える環境にない時は、うがいだけでも行うといいでしょう。もちろん、水で行ってもいいのですが、他の水分でも構いません。たとえば、「お茶うがい」では、お茶に含まれているカテキンが虫歯、インフルエンザなどの病気予防に効果があります。カテキンが持つ抗菌作用でいろんな菌からお口を守り、むし歯の原因であるミュータンス菌の増殖を抑え、歯垢(プラーク)形成を抑えてくれます。
また、市販のうがい薬なども有効です。利根歯科診療所では、「リステリン」をお薦めしています。
しかし、うがいがむし歯菌を抑え、予防に適しているのは事実ですが、うがいだけではなく、歯磨きとの併用によって予防や治療の効果が上がることを忘れないようにしましょう。

・ポイント5 フッ素の利用
フッ素は歯に作用させることによって、歯を強化し、むし歯になるリスクを減らす効果があります。現在は市販の歯磨き粉のほとんどにフッ素が含有されていますが、歯科医院ではより効果の高いフッ素を歯に塗布することができます。是非、ご利用ください。そして、上手に食べられているかを歯科医院にて定期的にチェックするよう心がけて下さい。

(↓は「まとめ食べ、だらだら食べ」図の出典元です)
「ふたつき子ども歯科院長日記」2007年1月23日記事より。
(URL:http://blog.goo.ne.jp/futam)

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