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口ってすごい! 歯と口の健康習慣

2018年6月1日

利根歯科診療所 副所長

関上 幸子

 6月4日からの一週間は、「歯と口の健康週間」です。近年、自分らしく最期を迎えるために「食べられる口」が注目されていますが、ご存じですか?今月は、生きること、食べること、それを可能にする口の関係を見直してみます。

口のリハビリで食べる力が

 長崎市の男性Sさん68歳は、脳梗塞の後遺症で2年間寝たきりで食べることも喋ることも全くできなかったそうです。使われなくなった顔の筋肉はこわばり、口の中は不衛生で乾燥しきっていたところに同市の歯科医師がリハビリに入りました。表情筋のマッサージ、口の中のケア、舌の動きを回復させるための舌・顎下の筋肉のマッサージなど、リハビリが行われました。
 2か月後、口から食べられるようになったSさんは、自分でも毎日、口の体操やマッサージに励んだそうです。さらに1か月後、お子さんの結婚式でスピーチをするまでに喋る機能が改善。1年後、まだ歩けないものの普通食を食べ冗談を言い笑えるようになったそうです。

なぜ、口の機能はよみがえったのか?

 足は2年も動かさないと歩けなくなると言われています。口のリハビリをすることで2年間寝たきりだったSさんの口の機能がよみがえったのはなぜでしょうか?
 原始的な動物が、ほぼ口と消化管だけで生きているように、口は生命にとって一番基本的な器官です。そのため、長期間廃用があっても生命維持のためにその機能が衰えなかったからではないかと思われます。
 また、口周囲の筋肉が「食べる・呼吸する・喋る」ことに働き、それに呼応する脳の範囲が広いことにも関係があったと考えられます。そして、高齢者にとって食べることは一番の楽しみ。だから、口から食べられるようになって冗談が言えて笑うこともできた。人間性を取り戻すことにもつながる「口」ってすごい!と思いませんか?

食べられる口の条件 潤いがありきれいで噛める口

 このように口の機能の回復は、全身の回復、生活の質の改善に大きく関わっています。それには、「潤いがありきれいで噛める口」であることが重要です。

 


@潤いのある口
 乾燥した口では、僅かな刺激で痛み傷ができやすい上に汚れは落ちにくく、菌が繁殖し炎症が悪化します。さらに、食物は張り付きむせやすくなります。そこで、体を菌などから守り、痛みなく円滑に機能させるために潤いが大切なのです。
 軽い乾燥なら、鼻呼吸を心がけ、水分の摂り方を見直して下さい。食前に深呼吸を数回してから、あいうべ体操・舌回し(図1)をすると良いでしょう。
 見た目に渇いている時は、保湿剤を利用します。しっかり潤うまで重ね塗りし、専用のブラシ(図2)で掃除やマッサージを。それから先述した体操です。
 お薬を飲んでいると唾液が少なくなりやすいです。また、筋肉の衰えに伴い口呼吸になりがちです。早めに乾燥対策に取り組みましょう。

図1 あいうべ体操と舌回し運動

 

 

図2 保湿剤とマッサージグッズ

 

 

Aきれいな口

 痛みがなくても歯周病や進行した虫歯があると、歯ぐきや骨の血管を通じて細菌や免疫反応物質が、血流にのって全身に運ばれ、行った先で炎症を起こします。また、汚れた口の中にあった食べ物や唾液が気管に入ってしまうと誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。こうした状態があり抵抗力が落ちた時は危険です。次に示す病気の治療時は要注意です。

 

イ 頭頚部領域、呼吸器領域、消化器領域等の悪性腫瘍の手術
ロ 心臓血管外科手術
ハ 人工股関節置換術等の整形外科手術
二 臓器移植手術
ホ 造血幹細胞移植
へ 脳卒中に対する手術

 

 病気の有無と関係なく、歯科治療が終了しており、毎日の歯磨きや入れ歯磨きで感染源とならない、きれいな状態にしておくよう心掛けて下さい。

 

 

B噛める口
 噛むためには、単に歯があればいいというのではなく、入れ歯も含めて噛める状態が整っており、噛んで飲み込む運動ができることが重要です。
 それには、口の状態に歯や入れ歯が合っている事とそれを使いこなす口周囲の動きが必要です。入れ歯であっても1年に1回以上歯科での点検を。そして、口周囲をしっかり使い体操(図1)で筋肉を鍛えましょう。

食べられる口(健口)で健康に

 食べられる口のための具体的な取り組み方は各個人で異なります。歯科を受診して現状を評価し、自分に合った予防メニューをスタッフと相談して見つけましょう。
 食べることは、全身の様々な機能の協調で営まれるダイナミックな活動です。その素晴らしさを胸に毎日の食事を楽しむことが一番の健口(健康)法だと思います。