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もしも家族に認知症の症状が出てしまったら〜もの忘れ外来で進行予防

2013年11月1日

利根中央病院

 内科医師

橋本 由紀子

  

  テレビに出てくる人の名前を思い出せない、鍵をしまった場所を忘れてしまった、といった経験は誰にでもあるものだと思います。どこまでが正常の老化現象で、どこからを認知症と呼ぶのかは難しいですね。今回は、どんな症状が出たら病院につれていくべきか、

家族が認知症と診断されたらどう対処するのがよいか、などについてお話したいと思います。

正常の老化との違い

 

   まず、自分で物忘れを心配して病院に来られるかたは、認知症ではないことが多いです。認知症の場合、病識がないというのが大きな特徴です。無理やり連れてこられて診察室でケンカになる親子などは、それだけで認知症と診断してもいいくらいです。もう一つの特徴として、出来事そのものを忘れてしまうということがあります。例えば、旅行に行って立ち寄ったお店の名前を思い出せないのは正常の老化現象であることが多く、旅行に行ったこと自体を忘れてしまう場合には認知症が疑われます。また、認知症の場合物忘れによって日常生活や仕事に支障が出てきます。進行すると幻覚や妄想が出ることがあります。当院の物忘れ外来では、診察に先立ってチェックシート(図1)にチッェクしていただきますが、いくつか該当する場合には認知症が疑われますので受診をおすすめします。

図1「認知症かな?チェックシート」

(新井平伊監「認知症が気になる方へ」より)

認知症をおこす病気
 

  アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症の二つが多く、両者を合わせ持っているケースもあります。また、幻覚が主体のレビー小体型認知症、行動異常が目立つ前頭側頭型認知症といった特徴的な症状を持つ認知症もあります。慢性硬膜下血腫や特定の部位に生じた脳梗塞から認知症の症状が現れる場合もあり、物忘れ外来では認知症のあるかたには全例に脳のCTまたはMRIを行っています。MRIと質問形式の認知症検査と問診で、多くの場合診断がつきます。

 

アルツハイマー型認知症の治療薬

 

  日本では長い間アリセプト(ドネペジル)という薬が唯一の治療薬でしたが、最近次々と新薬が登場し、錠剤・粉薬・内用液・貼り薬など形態も選択できるようになりました。現在認知症を完治させる薬は開発されておらず、症状を改善して進行を遅らせたり、介護者の負担を軽減するといった目的で使われています。

 

治療可能な認知症:特発性正常圧水頭症

  

  最近テレビや新聞で話題になったこともあり、注目されている病気です。認知症と歩行障害、特にパーキンソン病に似た小刻み歩行などがみられます。MRIで脳室の拡大がみられ症状が合致する場合には脳外科と相談し、脳にたまった髄液を排出するシャント術という治療を検討します。ただ、手術をして100%症状が消失するということはありません。

  

介護における問題点・その対処法

  

  単に出来事を忘れるだけであれば家族にはそれほど負担がかかりませんが、進行してくると自分が忘れたことを認識せず人のせいにする、具体的には財布をなくして家族に盗まれたと思い込むといったようなことがおこります。このような被害妄想は身近な人に向けられることが多く、家庭内のトラブルになります。また、他人が家に侵入している・子供が大勢家に入ってくるなどといった幻覚がみられるかたも多いです。そのような場合、本人を責めても解決にはなりません。病気のせいだと家族が理解し、大事なものは家族が管理したり幻覚に対しては否定せず見守る方がうまくいきます(図2)。この状態になれば家庭での介護は難しくなってきますので、デイサービスやショートステイなどをうまく利用しましょう。

図2 認知症家族の接し方の10カ条

なじみの関係

顔なじみ落ち着き与える安心感

心の受容
意に添ってこころ受け止め温かく
心のゆとり
怒らずに相手に合わせるゆとり持つ
説得より納得
理屈より気持ちを通わせ納得を
意欲の活性化
本人を生きいきさせるよい刺激
孤独にしない
寝たきりや孤独にしない気づかいを
人格の尊重
プライドやプライバシーの尊重を
過去の体験は心のよりどころ
本人の過去の体験大切に
急激な変化を避ける
環境の急変避けて安住感
10
事故の防止を
事故防ぐ細かな工夫気配りを

         認知症予防財団ホームページ(http://www.mainichi.co.jp/ninchishou/kazoku.html)より              

車の運転について

 

  75才以上になると運転免許更新時に認知機能検査を受けることになっており、そこで認知症が疑われると専門医による診察を受けるように言われます。しかし簡易的な検査であるため、実際には認知症のかたでも問題なく更新できてしまっています。当院の物忘れ外来で認知症と診断し治療を開始した人には、運転をしないようにお話しています。そうすると多くのかたは「車がないと生活できない」といいます。「生きていてもしょうがない、死ねと言っているようなものだ」と怒るかたもいます。高齢ドライバーの事故は近年急激に増えています。ご家族の協力や介護サービスの利用によって、認知症患者さんが運転しなくても生活できるような環境を作ってあげていただきたいと思います。